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第175回直木賞、受賞発表前に読んでおきたい候補作5選

2026年7月10日 公開・受賞発表は2026年7月15日

第175回直木賞の候補作5作が出そろいました。受賞発表は7月15日。結果を知ってから読むか、結果を知る前に読んで自分なりの予想を立てるか——後者を選ぶなら、残された時間はもう多くありません。ここでは候補5作を、著者の他の代表作もあわせて、受賞発表前に読むならという視点で紹介します。

そもそも直木賞とは

直木賞(正式名称: 直木三十五賞)は、文藝春秋の創業者・菊池寛が、友人だった作家・直木三十五を記念して1935年(昭和10年)に制定した文学賞です。現在は公益財団法人日本文学振興会が主催し、選考会は年2回、上半期分は7月に、下半期分は翌年1月に開催されます。

対象になるのは、新進・中堅作家によるエンターテインメント小説(大衆小説)の単行本。よく並べて語られる芥川賞は、新人による純文学作品が対象という違いがあります。今回の第175回は上半期分にあたり、2026年7月15日に選考会が開かれ、その日のうちに受賞作が発表される予定です。

『けんぐゎい』朝倉かすみ

直木賞候補 3度目

江戸時代後期の江戸を舞台にした時代小説。幼い頃の病で顔に痘痕(あばた)が残った姉・ふゆと、恵まれた容姿を持つ妹・りよ。早くに父を亡くした二人は、ふゆは手習師匠のもとへ、りよは船宿の奉公へと、対照的な道に出されていきます。師匠の養子から理不尽な仕打ちを受けたふゆは、ある女医者との出会いを機に、自分の人生を自分の手で切り拓いていく——。容姿への視線や家父長制といった主題を、江戸という舞台を借りて描き出した、朝倉さんにとって初めての本格的な時代小説への挑戦です。

著者について

朝倉かすみは1960年北海道小樽市生まれ。2004年「肝、焼ける」で小説現代新人賞を受賞してデビュー。2019年には『平場の月』で第32回山本周五郎賞を受賞しています(同作は第161回直木賞候補にも)。今回で3度目の直木賞候補です。

『見えるか保己一』蝉谷めぐ実

第39回山本周五郎賞受賞作・初候補

江戸時代、幼くして視力を失いながらも学問を志し、日本最大級の叢書『群書類従』の編纂という前代未聞の大事業に挑んだ実在の国学者・塙保己一を描く歴史小説。類まれな記憶力で学者としての道を切り拓く一方、妻や弟子ら晴眼者との間に生まれるすれ違いも丁寧に描かれます。

著者について

1992年大阪府生まれ。早稲田大学文学部で演劇映像コースを専攻し、化政期の歌舞伎をテーマに卒論を執筆。2020年、デビュー作『化け者心中』で小説 野性時代新人賞など三冠を受賞し、2作目『おんなの女房』でも吉川英治文学新人賞・野村胡堂文学賞を受賞。歌舞伎ものが続いていた著者にとって、本作は初めて実在の人物に挑んだ意欲作です。

『多類婚姻譚』凪良ゆう

2度目の候補・発売即重版で12万部突破

結婚をテーマにした5編からなる連作短編集。セクシュアリティやジェンダー、金銭感覚、世代間の価値観のずれなど、「一番近くにいる他人」であるはずのパートナーと、わかりあえなさとどう向き合うかを描きます。同棲相手が女性であることを家族に打ち明ける会社員、離婚後に実家の本屋を継いだ女性など、5つの異なる関係性が交差します。

著者について

凪良ゆうは2019年刊行の『流浪の月』で2020年本屋大賞を受賞(2022年に李相日監督で映画化)。2022年刊行の『汝、星のごとく』でも2023年本屋大賞を受賞し、本屋大賞2度受賞は恩田陸に次いで2人目という快挙を達成しています。『美しい彼』も代表作の一つです。

『#台所のあるところ』原田ひ香

『三千円の使いかた』の著者最新作

世代も境遇も異なる5人の女性を描く連作短編集。大型冷蔵庫を買い替えようとするひとり暮らしの主婦、姓によって反目し合う風習の残る島に嫁いだ女性など、それぞれの台所を舞台にした物語が、ある深夜ドラマ「台所のあるところ」を介してゆるやかに繋がっていきます。

著者について

1970年神奈川県生まれ。2006年「はじまらないティータイム」ですばる文学賞を受賞してデビュー。代表作『三千円の使いかた』『一橋桐子(76)の犯罪日記』はともにドラマ化。「見守り屋」を営む主人公が仕事帰りに一杯やる『ランチ酒』シリーズ、『三人屋』シリーズなど著書多数の実力派です。

『青天』若林正恭

オードリー若林正恭 初小説・累計29万部超

1999年の東京を舞台にした青春小説。アメフト部の主将・中村昴(通称アリ)は、高3の引退大会で強豪校に完敗し、そのまま宙ぶらりんの日々を過ごすことになる。一流の選手にも優等生にも不良にもなれない「中途半端な自分」への焦りと向き合いながら、それでも全力でアメフトにぶつかっていく姿を描く群像劇です。

著者について

お笑いコンビ「オードリー」のツッコミ担当として2000年に結成、2008年M-1グランプリで準優勝。エッセイストとしても知られ、『社会人大学人見知り学部卒業見込』(2013年)、キューバひとり旅を綴り斎藤茂太賞を受賞した『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』(2017年)、『ナナメの夕暮れ』(2018年)などが代表作。『青天』は自身初となる小説作品です。

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